有酸素運動で筋肉量が減るってホント?有酸素運動と筋肉の関係
ジョギングなどの有酸素運動を行うことで筋肉が減ってしまう、なんて話を聞いたことがありませんか?
果たしてそれは本当なのでしょうか?
筋肉を減らしてしまうのであれば有酸素運動はやらないほうが良いのでは?
実は、運動時の状況や運動のやり方によってこの疑問への答えが変わってきます。
有酸素運動は体調を整えてくれる
有酸素運動が健康のために効果的ということは、ご存知の通りです。
有酸素運動を続けることで心肺機能を強化して疲れにくい身体になり、血管が鍛えられて血圧は安定します。
体脂肪を燃焼して中性脂肪を減らし、脂質代謝や糖代謝を正常化します。
また、血流が上がることで体中に酸素や栄養素の供給が十分に行われ、脳は活性化しストレスもたまりにくくしてくれます。
ジョギングなどの刺激は骨強化に役立ち、骨粗鬆症の予防にも効果的でしょう。
有酸素運動というのは単なるダイエットのためだけの運動ではなく、体全体の調子を整え、健康を維持するためにもとても効果的な運動なのです。
すべての人にとって良い効果をもたらすであろう有酸素運動ですが、筋肉を大きくしたい人にとってはあまり効果的とは言えない側面を持っています。
有酸素運動が筋肉を減らしてしまうのはこんなとき
人間の筋肉は大きく分けて速筋と遅筋の二種類に分類されます。
有酸素運動のような持久力を重視するトレーニングでは主に遅筋が使われます。
遅筋というのは鍛えても太くなりにくい筋肉で、収縮速度は遅く強い力は出せませんが疲労しにくいのが特徴です。
有酸素運動では長時間、一定の強度で力を出し続ける能力が重要であり、瞬発的に強い力を発揮する必要はないのです。
ですから速筋を使うことはありません。
速筋は強い力を出せますが疲労しやすい筋肉ですので長時間の運動では積極的には使えないのです。
そのため有酸素運動を大量にやったとしても速筋の特徴である筋肥大は起こらず、見た目に筋肉がついたようには見えません。
それどころかずっと有酸素運動だけをやり続けていると速筋への刺激が少なくなり、速筋繊維の断面積は減少していきます。
さらにダイエット目的で有酸素運動を行う場合、脂質の利用を最大限に促すため、糖質の摂取を抑える方がいます。
実際には有酸素運動で必要なエネルギーは糖質からも供給されますので、極端に糖質が減ると何とかして体内で糖質を作ろうとします。
この反応を「糖新生」と言いますが、このとき材料となるのがタンパク質で、そのタンパク質はどこからやってくるのかというと筋肉を分解して取り出しているのです。
以上のことから、有酸素運動を行うことで筋肉が減ってしまうという現象は起こり得るといえます。
有酸素運動による筋肉の減少を防ぐには?
ダイエット中には筋肉の分解が起きてしまう!
だからといって、筋肉量を減らさないためには有酸素運動をやってはいけない、ということはありません。
痩せるにはカロリー収支が重要で、運動は消費カロリーを上げることでダイエットの効果を促進したり、ダイエット中の健康を維持するために有効なのです。
カロリー収支をマイナス(摂取カロリー<消費カロリー)にすると、足りなくなったエネルギーを体内から調達しなければならなくなるので痩せていくのですが、その時に脂肪だけが分解されるわけではなく、筋肉の分解も起こってしまいます。
ですからダイエット中には、有酸素運動をする・しないにかかわらず筋肉の分解は起こってしまいます。
こんなダイエットは控えよう
問題になるのは極端なカロリー制限や糖質制限を行っている場合です。
極端な食事制限を行いながら、さらに有酸素運動を加えるとどうなるか。
人間の身体にとって最も効率の良いエネルギー源は糖質ですから、糖質の摂取量が少ないと体内に貯蔵している糖質は枯渇してしまいます。
糖質が全くない状態では脂肪をエネルギー源として使う反応も起こすことができませんし、それどころか生命維持にかかわる身体活動のエネルギー不足にも陥りかねませんので、身体は何とかして糖質を作り出そうとします。
つまり「糖新生」が活発に行われるわけです。
糖新生の材料となる物質は9割方アミノ酸です。
人間の身体はアミノ酸を貯蔵することはできないので、血液中に含まれているアミノ酸を使ってしまうと、今度は筋肉を分解してアミノ酸を作り出すのです。
通常の状態ですと、栄養を補給すればまたすぐに必要な筋肉は合成されますので大きな問題にはならないのですが、食事制限でたんぱく質や糖質の摂取量が少ないと、筋肉は分解されたまま再合成されません。
過食を制限して健康を維持できる程度にカロリーを制限するのであれば、一般的なトレーニングレベルでの有酸素運動で減少する筋肉量はほとんど気にする必要はありません。
ただし、極端な食事制限を行ってしまうと、筋肉量の減少が身体活動や健康に悪い影響を及ぼす可能性が出てきてしまいます。
適切な食事制限と有酸素運動で健康的にダイエットを!
有酸素運動をすることで筋肉が分解されてしまう現象は確かに起こります。
しかし筋肉は一度ついたらもう落ちない、という組織ではありません。
常に分解と合成を繰り返し、分解が勝れば筋量が減り、合成が勝れば筋量は増加します。
有酸素運動で一時的に筋肉が分解されたところで、適切な栄養を補給すればすぐに合成されますのでほとんど問題ありません。
わずかな筋量の減少も防ぎたいボディビルダーや、高強度で有酸素性のトレーニングを行うアスリートたちであれば、トレーニングプログラムや栄養の摂取・補給方法にも細心の注意が必要でしょう。
一般的な健康維持やダイエットが目的であれば、出来れば筋量をアップさせるウエイトトレーニングなどを併用するのが理想的ですが、それほど神経質になる必要はありません。
極端なカロリー制限や糖質制限のほうが、深刻な筋肉量減少の原因となる場合が多いでしょう。
食事制限による無理なダイエットは控え、健康的に身体を引き締めていきたいですね。
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