ブラボーランニング(11)
ランニング時の水分補給の量とタイミング
目次
- 1 ランニング時の水分補給の量とタイミング
- 1.1 からだの「水分」=ミネラルや栄養分が溶けこんだ体液
- 1.2 水分を失ったときにからだに起こる問題
- 1.3 夏でも冬でも水分を失う主な原因は汗
- 1.4 水分の過剰摂取は「水中毒」を引き起こす
- 1.5 失った水分量と同程度の水分補給が理想
- 1.6 脱水・過剰摂取ともに防ぐ水分摂取方法は「のどが渇いたと感じたら水を飲む」
- 1.7 汗=水分喪失量はランニング前後の体重で簡単に推定できる
- 1.8 ランニング中はこまめに水分補給。1回200mlぐらいが良い
- 1.9 水分喪失は体重の1%ぐらいまでなら問題ない
- 1.10 ランニング前にはペットボトル1本分程度を摂取
- 1.11 体重チェックでいろんな条件下での汗の量を把握しておく
- 1.12 自分に合った水分補給量を見つけましょう
- 1.13 ランニングに関するおすすめ記事
- 2 高梨 泰彦
ダイエットから記録更新まで!
人間の体重の約60%を構成する水分。体重が60kgのランナーならば実に35~40kgが水分になります。
実は、ランニング時に失った水分=汗の量は体重の変化から簡単に推定できます。
水分は不足しても過剰に摂取してもいけません。失った分と同程度の水分を補給するのが理想です。
今回はランニング時の水分補給の大切さと、実際の水分補給の量とタイミングについてお話ししましょう。
からだの「水分」=ミネラルや栄養分が溶けこんだ体液
私たちのからだの「水分」、とはいってもその大部分は「水」そのものではなく、ミネラルや栄養分を溶かした体液(血液やリンパなど)という形で存在しています。
体液のおかげで、からだの隅々にまで栄養が運ばれますし、いらなくなった老廃物も処理してくれます。
また体温を一定に保つ作用など、からだの環境を一定に維持する役割も体液は担っています。
水分を失ったときにからだに起こる問題
このような重要な役割を果たしている水分を失うと、いろいろとまずい問題が生じてきます。
体重に対する喪失量で整理すると以下のようになります。
2%程度:のどの渇き、ランニングパフォーマンスの低下
3~5%:頭痛、めまい、嘔吐、ひどい倦怠感、体温の上昇
5~9%:血圧低下、けいれん
10%以上:心臓・腎臓などの不全、昏睡状態、最悪の場合は死亡
夏でも冬でも水分を失う主な原因は汗
からだの中の水分はたいていの場合「汗」によって喪失します。
ランには汗がつきもの、暑い夏はもちろん、寒い冬でも汗をかくのが普通です。
たとえば体重60kgの人の場合、だいたい1リットル程度(約1.6%)の水分喪失でランニングパフォーマンスの低下が始まり、タイムが落ちていきます。
夏の暑い日などあっという間に1.5~2リットルぐらいの汗が出ます。
するとめまいや吐き気、ひどい時にはけいれんが起きます。これがいわゆる熱中症です。
こまめな水分補給が重要になるわけです。
水分の過剰摂取は「水中毒」を引き起こす
水分喪失とともに、水分の過剰摂取も大敵です。
皆さんもご存知の通り、ハワイのホノルルマラソンは炎天下での大会として有名です。
熱中症を防ぐために、ランナーの方々は皆さん水分補給に気を配っています。
大会当日、給水ポイントごとに強制的に一定量の水分補給をした結果、水中毒(過剰な水分摂取による中毒症状)になってしまい、嘔吐・顔面蒼白などの症状が現れた例も見られました。
摂り過ぎもまずいわけで、適度な水分補給が大切であることを示す一例です。
失った水分量と同程度の水分補給が理想
昔から試合中やレース中には水を飲むなと言われてきました。
これは今となっては誤った指導と断言できます。
水分の不足はパフォーマンスの低下につながりますし、脱水が進むと何よりも危険です。
一方で水分の過剰摂取も問題です(低ナトリウム血症など)。
では適度な水分補給はどのように実施すればよいのでしょうか。
ランニング中の水分摂取は、ランの速さやその時の気温・湿度、体格にもよりますが、基本的には失った水分量と同程度の補給が理想です。
しかし走っている最中にどのぐらい水分が失われているかを具体的な数値で知るのは困難。
そこで日本ランニング学会が「マラソンレース中の適切な水分補給について」というレポートを作成し公表しました。
脱水・過剰摂取ともに防ぐ水分摂取方法は「のどが渇いたと感じたら水を飲む」
ランニング学会では次のような水分摂取の方法を薦めています。
水分補給は、客観的な数値をよりどころにするよりも、「のどの渇き」に応じて水を飲む、という方法です。
えっ、そんなことでいいの? と思うかもしれません。
走っていることに熱中するあまり、知らない間に脱水が進行してしまうこともあります。
過度な脱水が心配です。
しかし体重の1~2%ぐらいまでの水分喪失であれば、科学的にはあまり大きな問題は生じないというのが現在の見解です。
ですから多少頑張って走ってしまったときでも、気が付いたときにすぐに水分補給をすれば問題ありません。
とにかく少しでも「のどが渇いたな」と感じたら水分を補給することです。気楽に考えましょう。
この方法が脱水とともに、水分の過剰摂取による弊害を防ぐ効果が高いことがわかっているのですから。
汗=水分喪失量はランニング前後の体重で簡単に推定できる
一方、のどの渇きを我慢しがちな人や、特に暑い日には脱水が進んでしまう恐れがあります。
心配であれば計画的な水分摂取を心がけると良いでしょう。
ではどのように計画をするかですが、そのためには自分の汗の量を知る必要があります。
次のような方法で簡単に汗の量、すなわち水分喪失量が推定できます。
ランニング前の体重-ランニング後の体重-補給した水分量≒発汗量
たとえばラン前の体重が60.5kg、ラン後の体重が59.2kg、ラン中にペットボトル1本(500ml≒500g=0.5kg)飲んだとすれば、60.5-59.2-0.5=1.8(kg)となり、ほぼ1.8リットルの汗をかいたことになります。
ですからランニング中にだいたい1.8リットルの水分補給をするのが良いことになります。
ランニング中はこまめに水分補給。1回200mlぐらいが良い
もちろん一度に摂取するのは身体に負担をかけますので、こまめに補給するのがよいでしょう。
ランニング中、のどが渇いたときの1回の水分摂取量は200mlぐらいまでが良いと言われています。
あまりがぶがぶと飲むと身体に負担がかかるからです。
水分喪失は体重の1%ぐらいまでなら問題ない
なお水分喪失量は体重の1%ぐらいまででしたら全く問題ありません。
上の例では60kgの1%、すなわち0.6リットルぐらいの水分補給は気にしなくても大丈夫ということになります。
したがって無理して1.8リットルの水分補給をしなくても、1.2リットル程度の水分補給をすれば快適にランを楽しめます。
ランニング前にはペットボトル1本分程度を摂取
また、脱水が心配な人や真夏の暑い時のランニングでは、ランを始める前に水を飲んでおくことも効果的です。
だいたいの目安は500ml、つまりペットボトル一杯分です。
体重チェックでいろんな条件下での汗の量を把握しておく
汗の量は気象条件によってもだいぶ違ってきます。
トレーニングのときには体重をチェックする習慣をつけましょう。
すると気象条件や環境条件の違いによって、自分の汗の量をだいたい把握することができるようになります。
そうすれば条件の違いによって補給すべき水分の量がわかります。
自分に合った水分補給量を見つけましょう
昔から言われてきた水分摂取を我慢することは美徳でも何でもありません。
また決まった量を強制的に摂取することも身体に悪い影響を及ぼします。
ランのトレーニングのときには、のどが渇いたときに水を飲む習慣をつけ、どんな飲み方が自分に合っているかを自分のからだで試してみるようにしましょう。
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