有酸素運動で脂肪が燃焼する仕組み、メカニズムって?

有酸素運動で脂肪が燃焼する仕組み、メカニズムって?

有酸素運動が脂肪を燃焼させるといわれています。
どんな仕組みで脂肪が燃えるのかがわかれば、どのような運動をどれくらいやれば痩せていくのかが分かるのではないでしょうか。
今回はそのメカニズムについて、少し専門的にご紹介していきます。

有酸素運動のためのエネルギーはどこから?

人間は生きている限り常に体内でエネルギーを生み出しています。
見た目に動きがなく、意識がないような状態でも常にエネルギーを作り、それを使っています。

循環器系や呼吸器系の器官は生命維持のため、意識していなくても動いています。
そしてそれを動かすためにはエネルギーが必要となります。

それに加えて体を動かしたり、脳などで神経活動を行ったり、食事をとって消化吸収をしたりと様々な活動をするため、さらにエネルギーが必要になります。

様々な身体活動をスムーズに行うために、人の身体は状況に合わせたエネルギー供給のシステムを複数持っています。

その中の一つが有酸素性のエネルギー供給システムであり、その有酸素性エネルギー機構で作り出されたエネルギーを主に利用して行われる運動は有酸素運動と呼ばれています。

有酸素性エネルギー機構でエネルギー基質として使われるのは、主に糖質と脂質です。
タンパク質は、かなり長時間にわたって運動するなどといった特殊な場合以外はあまり使われることはありません。

日常生活レベルの身体活動では有酸素性機構が優位に働き、エネルギーの5割から7割程度は脂質から、残りは糖質から得られています。

運動が始まり、その強度が増すにつれてエネルギー基質はより効率の良い糖質へと切り替わり、高強度の運動になれば、有酸素性の運動でもほぼ100%が糖質からのエネルギー供給で賄われます。

しかし運動強度を上げずに一定のペースで長時間運動が行われると、エネルギー基質は徐々に糖質から脂質へと戻っていきます。

脂肪を分解・燃焼するメカニズム

エネルギー供給に脂肪が動員されるメカニズムを少し詳しく解説しましょう。

運動を始めると、その刺激がカテコールアミン(アドレナリンやノルアドレナリンなど)といわれるホルモンの分泌を促します。

そのカテコールアミンが脂肪細胞表面にある受容体に結合することでプロテインキナーゼ(タンパク質リン酸化酵素)が活性化、さらにそのプロテインキナーゼの働きにより細胞内のホルモン受容性リパーゼがリン酸化します。

リン酸化されることによってリパーゼとしての働きが強くなったホルモン受容性リパーゼは、脂肪細胞に含まれているトリグリセリド(中性脂肪)を遊離脂肪酸とグリセロールに分解し、血液中に放出します。

血中に放たれた遊離脂肪酸は筋繊維へと運搬され、その細胞内に取り込まれます。
そこで脂肪酸はミトコンドリアに入って完全に酸化されて大きなエネルギーを放出するのです。

脂肪酸を酸化するためには大量の酸素が必要とされるため、瞬発的で強い力を要する運動よりも、酸素を十分取り込みながらできる低強度で持続的な有酸素運動が脂肪の消費には有効とされるのです。

最近の研究ではホルモン受容性リパーゼだけでなく、ぺリリピンというタンパク質のリン酸化も脂肪動員のきっかけとして注目されています。

脂肪の燃焼率は運動強度がカギ

強いパワーを要する高強度の運動においては、素早いエネルギーの供給が必要となるので、フォスファゲン機構や解糖といった無酸素性のエネルギー機構が用いられます。

無酸素性エネルギー機構ではフォスファゲン(ATPとクレアチンリン酸)と糖質をエネルギー基質とし、脂質の分解は行われません。

運動の強度や継続時間によって運動中のエネルギー供給における無酸素性機構と有酸素性機構の割合は変化します。

運動中に多くの脂肪を燃焼したければ、低強度で長時間の有酸素運動を行うべきでしょう。

一般的に強度が低いと時間あたりに消費できるカロリー量は少ないので、出来るだけ長時間行うことで消費されるカロリーの量を増やすことができます。

そして酸素を十分に補給しながら一定のペースで運動することにより、消費されるカロリーの内訳も脂肪の燃焼で得られる割合が多くなります。

人によって運動強度の感じ方は違う

ここでいう運動強度が高い、低いというのは相対的なもので、その人の筋力や心肺機能の発達度合いによって負荷の大きさは変化します。

例えば、5kmを30分で走るとします。
この運動を5000m走のオリンピックアスリートと何年も運動していない方が行ったとして、身体に感じる負担や疲労度は同じだと思いますか?

オリンピック級のアスリートであれば5kmを13分台で走ることが可能ですので、30分は感覚的に歩くに等しいでしょう。

一方運動不足の方にとって5kmは、完走すら難しいのではないでしょうか?

このように同じ強度の運動でも、相対的に感じ方は変わってしまいます。
アスリートにとって5km30分は軽い運動ですが、運動不足の方には限界以上のきつい運動です。

利用されるエネルギー基質もアスリートは脂質の割合が多く、おじさんは糖質がメインで使われるでしょう。

しかし、消費カロリーはどちらも(体重kg×5)kcalです。

ランニングによる消費カロリーを上げたければ、時間ではなく距離をのばさなければなりません。

走力の高い人は短時間で長距離を走ることが出来るので、消費カロリーも上げやすいです。

初めはしんどいのが当たり前!運動習慣を身につけてカロリーにも注意しよう

運動不足で肥満気味の方は有酸素運動で脂肪を燃焼させることも相対的に大変です。

感覚的にものすごくしんどいのに、最初は思ったほど消費カロリーも脂肪の燃焼率も上がりません。

これは仕方のないことなのですが、このせいで挫折してしまう人も少なくありません。

しかし、最初からこの事を理解していれば焦ることはないでしょう。

最初は消費カロリーや脂肪燃焼率にこだわりすぎず、運動習慣をつけることが重要です。
そして少しずつ走ることに身体を慣らし、筋力や心肺機能、神経系の反応などを発達させて走力をつけていきましょう。

そうすれば身体は勝手に変化していきます。

ただし、食事にも気をつけてください。
いくら頑張って脂肪燃焼ゾーンの強度を上げ、消費カロリーを増やしたところで摂取カロリーがそれを上回ってしまうと、体重の減少は期待できません。

身体の中で脂肪がどのように代謝されるのかが分かれば、おのずと痩せる方法も分かると思います。

この記事が脂質代謝の全てではありませんが、有酸素運動がどのように脂肪を燃焼させるかを分かっていただければ、結果が出るまでモチベーションを維持する助けにはなるのではないでしょうか。

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