ブラボーランニング(13)ランニングのための栄養摂取~栄養素を理解しよう

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ブラボーランニング(13)

ランニングのための栄養摂取~栄養素を理解しよう

目次

ダイエットから記録更新まで!

ランニングを続けていると「もっと記録を伸ばしたい」とか「もっと長く走れるようになりたい」など、どんどん気持ちが上向いていきます。
記録向上のためには身体づくりが大切なのですが、そのためには計画的なトレーニング、十分な休養、そして適切な栄養摂取が重要な3本柱。
今回は栄養摂取を理解するために必要な、基本的な栄養素の知識を説明したいと思います。

体づくりに欠かせない栄養素の種類

まず栄養素にはどのような種類があるかを整理しておきましょう。

まず最も基本的なものとして、1.糖質、2.脂質、3.タンパク質 の3つを「三大栄養素」、そしてこれらに4.ミネラル、5.ビタミン を加えて「五大栄養素」と呼びます。

ランニングにおける五大栄養素の働き

これらの栄養素はざっくりと分類すれば次のようになります。

(A)ランニングのエネルギー源として必要なもの
  1.糖質、2.脂質、3.タンパク質

(B)ランニングのための身体づくりに必要なもの
  2.脂質、3.タンパク質、4.ミネラル

(C)ランニング記録向上のためのコンディション調整に必要なもの
  4.ミネラル、5.ビタミン

以下、ランニングに関連付けて詳しくみていきましょう。

ランニング中の糖質は「すぐに使える」エネルギー源として大切

ランニングのエネルギー源は何かと問われれば、それは「糖質と脂質」となります。そして特に大切なのが糖質です。
なぜかというと糖質は「すぐに使える」エネルギー源だからです。
たとえばランニングを始めると「最初に使われる」のが糖質。
またランニングの途中での様々なアクシデントに対して「急な」対応が必要な時にも糖質が必要ですし、マラソン選手がレース終盤で「ラストスパートをかける」ときにも糖質は欠かせません。
レースに勝つためには終盤での糖質補給は特に重要です。

糖質は脳のエネルギー源。不足するとレース中の駆け引きにも影響が

また、脳はエネルギー源として糖質しか使えません。
お腹がすくと血液中に流れる糖質の量が減り(血糖値が下がる)、脳が栄養不足になります。
すると思考力が鈍り考えるのが嫌になってボーっとしたり集中力が切れたりします。
レース中に駆け引きをしたり種々の環境変化に対応したりするには、常に頭を働かせておく必要がありますが、そのためには糖質を十分補給しておかなければなりません。

蓄えておける糖質は少ないのでランニング中の補給が大切

糖質はご飯やパン、パスタなどの麺類、イモ類、果物類、お菓子類、ジュース類などに多く含まれています。
また摂取した糖質は肝臓や筋肉に「グリコーゲン」という形で蓄えられます。
とはいっても蓄えることができる糖質の量は脂質に比べると非常に少なく(脂質は皮下脂肪や内臓脂肪といった形で多く貯蔵できます)、ランニングの最中に糖質不足でガス欠が起きることもあります。
ですからレースが近づいてきたら糖質を多く摂るような食事を心がけましょう。
またレース中でも、スパートが必要になってきたらレース展開に合わせて糖質をタイミングよく補給することが大切になります。

「脂質」は効率の良いエネルギー源

エネルギー源としてもう一つ大切な栄養素が脂質です。
糖質が1gあたり約4kcalのエネルギー量しかないのに比べ、脂質は9kcal。とても効率の良いエネルギー源です。

糖質は1gあたり約4kcal、脂質は9kcal。脂質はとても効率の良いエネルギー源。

ある程度強めの運動のときや急な対応に迫られた時には糖質がその主役を果たしますが、ゆっくりとしたジョギングや歩行運動など、いわゆる「有酸素運動」では、脂質の使われる割合が高くなり、主たるエネルギー源となります。

脂質は保温や内臓の保護・安定化にとても重要な栄養素

また脂質というと肥満の敵とか生活習慣病の原因など、何かと悪いイメージが付きまといます。
しかし細胞膜や血液、ホルモンなど、身体づくりには欠かせない栄養素ですし、保温や内臓の保護・安定化にとても重要な役割を果たしています。

マラソンに必要なエネルギーは2000~3000kcal。糖質だけでは賄えない!

皆さんはフルマラソンでどのくらいエネルギーが必要か知っていますか?
からだの大きさにもよりますがだいたい2000~3000kcalです。
これだけのエネルギー量はからだに蓄えられている糖質だけで賄うことができません。そこで登場するのが脂質です。

脂質は皮下脂肪や内臓脂肪としてからだに大量に貯蔵されています。
たとえば体重60kgで体脂肪率が15%とすれば、体脂肪量は9kg、したがって
 9(kcal)×9000(g)=81000(kcal)
となり、実に約8万kcalもエネルギーが身体に蓄えられている計算になります。
マラソンで考えると約30回以上も完走可能。脂質ってすごいですね。

脂質はとりすぎ注意。食事で自然に摂取すれば十分

脂質は意識して摂取するというよりも、食事の中で自然に摂取するものだと考えましょう。
たとえばメインディッシュのお魚や肉類にも抱負に含まれていますし、調理の中では揚げ物、焼き物にも脂質(食用油やオリーブオイル)が使われます。
またサラダドレッシングや洋菓子(特に生クリームなど)にも多く含まれています。
このように食事の中で脂質はあちらこちらに含まれていますから、逆に摂り過ぎないように注意する必要があります。
揚げ物を控えるとか肉の脂身は避けるなど気を付けるようにしたいものです。
ランナーにとって必要以上の体脂肪は、体重を増加させてしまう余分な「重り」になるだけですから。

ランニング後の筋肉を修復するのがタンパク質

からだづくりに必要な栄養素の代表がタンパク質です。
たとえば筋肉や血液、酵素の原料はタンパク質ですし、からだの機能を調整する免疫細胞やホルモン、神経伝達物質などもタンパク質によってつくられています。
ランナーの中には毎日走っている人や、週に2~3回しか走らないという方もいるでしょう。
いずれの場合でも走ることで筋肉は少なからずダメージを受け損傷します。
回復のためには筋肉の修復が必要で、しっかりとタンパク質を摂取しないと回復は望めません。

タンパク質を摂取するということは、アミノ酸を摂取することと同じ

タンパク質は種々のアミノ酸(全部で20種類あります)からできています。
タンパク質を摂取するということはアミノ酸を摂取することと同じです。
トレーニング後にタンパク質のサプリメント(「プロテイン」などと呼ばれています)を牛乳に溶かして飲んでいる人をよく見かけますが、これはアミノ酸を効率よく摂取するのに役立ちます。

「必須アミノ酸」の中でもBCAAはスポーツ選手も注目

特に重要なアミノ酸は、人間の体内で自力で合成することができない「必須アミノ酸」(9種類あります)と呼ばれています。
中でもBCAAと呼ばれるバリン、ロイシン、イソロイシンは、糖質の代謝の調節や筋肉の修復を促進する働きがあると言われており、スポーツ選手の中で注目を集めています。
ランナーにもぜひ摂ってほしいアミノ酸です。

「食べて走る」ことで無駄な脂肪を燃やして質の良い筋肉を増やす

タンパク質は肉、魚、たまご、乳製品などに豊富に含まれています。
ダイエットをしたいからといって肉や魚を敬遠する人も多いのですが、ランナーにとってタンパク質は最重要の栄養素といっても過言ではありません。
「食べて走る」ことが大切で、積極的にタンパク質を摂り走って汗をかくようにしましょう。
無駄な脂肪が燃え質の良い筋肉が増えることで、すっきりとしたボディに変わっていくこと請け合いです。

「食べて走る」ことで無駄な脂肪を燃やして質の良い筋肉を増やす

ランナーにとって特に重要なミネラルはカルシウムと鉄

からだづくりや体調の維持管理に重要なのがミネラルです。
ミネラルにはいろいろな種類がありますが、ランナーにとって特に重要なのはカルシウムと鉄です。
これらのミネラルはからだへの吸収率が悪く不足しやすいことに加え、からだに蓄えておくこともできません。意識的に摂取するようにしましょう。

カルシウムは汗で排泄されやすい。発汗量の多いランナーは要注意

カルシウムは骨の主要成分です。
不足すると疲労骨折しやすくなり、ちょっとしたトレーニングでも故障が起きやすい体質になってしまいます。
また筋肉の収縮や神経の調節にも関係しており、不足すると足がつったりふくらはぎのけいれんが起きやすくなったりします。
汗をかくことでカルシウムは排泄されやすいので夏場など特に発汗量の多いランナーは注意が必要です。

カルシウムもタンパク質も摂取できる牛乳はランナーにオススメ

水分補給時にはカルシウムを含む飲み物を摂ると良いでしょう。
カルシウムは牛乳などの乳製品に多く含まれています。
ランナーにとっては、牛乳の摂取でカルシウムもタンパク質も摂取できます。積極的に飲むのがおすすめです。

血液中で酸素を運ぶ「ヘモグロビン」の原料が鉄とタンパク質

ランニングが有酸素運動であることはお話ししましたが、有酸素運動である以上、酸素を効率よくからだの隅々まで運ぶ必要があります。
血液中で酸素を運ぶ役割を果たしているのがヘモグロビン。
そしてこのヘモグロビンの原料が鉄とタンパク質です。
特に女性ランナーの場合、月経などの影響で鉄分を喪失しやすく意識的に鉄の補給をする必要があります。
夏場や走り込みの時期は、汗によっても鉄を喪失しやすくなりますので、積極的に鉄分を多く含む食事をしましょう。
鉄はレバーやひじき、ホウレンソウに多く含まれています。
レバーが苦手な人は海藻や緑黄色野菜を多く食べると良いでしょう。

ランナーにとって重要なビタミンはビタミンB1、B2、C

ビタミンもミネラルと同じように体調管理やからだの種々の機能の調節をしてくれる大切な栄養素です。
ランナーにとって重要なビタミンはビタミンB1、B2、Cの3つです。

ビタミンB群の働きは3大栄養素をエネルギーに変換すること

ビタミンB群は、3大栄養素を効率よくエネルギーに変換するのに重要な働きをします。
中でもビタミンB1は糖質の代謝に深く関わっています。
ランニング中に糖質が必要になったときにはビタミンB1が不足するとエネルギーづくりの効率が下がります。
疲れやすくなったりガス欠になったりするわけです。
また脂質の代謝に関係するのがビタミンB2。特に長距離を走る場合は糖質だけでは不足ですので脂質を効率よく燃焼させなければなりません。
そのためには普段からビタミンB2の豊富な食品を食べることに心がける必要があります。

障害の予防に欠かせないビタミンC。さらに抗酸化作用で緊張感やストレスを緩和

一方ビタミンCは骨と筋肉をつなぐ靭帯や腱の成分となっている「コラーゲン」に関係するビタミンです。障害の予防には欠かせません。
またランニング中に発生すると言われている活性酸素(からだの老化を促進したり、組織を傷めつけたりする)に対する抗酸化作用もありますし、緊張感やストレスもビタミンCのおかげで軽減されます。
さらに吸収されにくいミネラルの鉄も、ビタミンCの助けがあれば吸収されやすくなり、酸素の運搬能力も高まることでスタミナアップにもつながります。
いいことづくめのビタミンC、ランニングには欠かせないビタミンですので、十分に摂取したいものです。

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アドバイザー

高梨 泰彦

YASUHIKO TAKANASHI

株式会社ケッズトレーナー 企画室 室長

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株式会社ケッズトレーナー

株式会社ケッズトレーナーは、一般の方々や多くのスポーツ選手の皆さんに、種々の障害の緩和や機能改善・向上を目的として、様々な角度から施術を実施しています。一人ひとりの患者様と寄り添い、スポーツマッサージを通して安心・笑顔・元気をモットーに日本全国で活躍中です。

http://www.ks-trainer.co.jp/

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