ブラボーランニング(15)
マラソン前の食事とレース中の栄養補給
目次
- 1 マラソン前の食事とレース中の栄養補給
- 1.1 フルマラソンを走るのにどのぐらいのエネルギーが必要?
- 1.2 レース前には糖質をしっかりと蓄えておこう
- 1.3 グリコーゲンを多く貯蔵できればスタミナアップ
- 1.4 「脂質」の貯蔵量はマラソン20~30回分相当!
- 1.5 マラソン出場1か月前頃からの食事法
- 1.6 マラソン出場3日前からの食事法「グリコーゲンローディング」
- 1.7 約50年前にはじまったグリコーゲンローディング法
- 1.8 現在主流のグリコーゲンローディング法は、より取り入れやすく変化
- 1.9 日曜日のレースを想定したグリコーゲンローディングのやり方
- 1.10 マラソン出場当日の朝食で摂る糖質は食べ慣れているものを
- 1.11 マラソンではゲン担ぎの「トンカツ」はNG
- 1.12 レース30分~1時間前の「補食」でさらに糖質を摂ると良い
- 1.13 レース中の水分補給のやり方は「のどが渇いたと感じたら飲む」
- 1.14 レース中の糖質の補給は20km過ぎから徐々にはじめる
- 1.15 「35kmの壁」の原因のひとつがグリコーゲン(糖質)不足によるガス欠
- 1.16 「ブドウ糖」は摂ってすぐ役立つ即効性のある糖質
- 1.17 「ブドウ糖」の大量摂取はNG。20km過ぎから少しずつ補給しよう
- 1.18 川内選手のスペシャルドリンクはとっても合理的
- 1.19 ランニングに関するおすすめ記事
- 2 高梨 泰彦
ダイエットから記録更新まで!
マラソンのレースが近づいてくると、何を食べるのが良いのか、スタミナアップのために何かいい食べ物はないかと悩むランナーも多いのではないでしょうか。
今回はそんな悩みをもつランナーのために、マラソン出場1か月前頃から当日朝、そしてレース30分前までの食事法と、レース中の栄養補給の方法について説明します。
フルマラソンを走るのにどのぐらいのエネルギーが必要?
フルマラソンを走るのにどのぐらいのエネルギーが必要でしょうか。
計算の方法は簡単で、概算ですが
体重(kg)×走る距離(km)=消費カロリー(kcal)
の関係があります。
体重60kgのランナーの場合は、
60(kg)×42.195(km)=約2500kcal
と計算できます。
このエネルギー量は速く走ろうがゆっくり走ろうが、走る時間には関係ありません。
したがってマラソンでは個人差はあってもだいたい2000~3000kcalぐらいのエネルギーが必要になるわけです。
レース前には糖質をしっかりと蓄えておこう
ところでマラソンは有酸素運動です。有酸素運動のエネルギーは、主として糖質と脂質で賄われます。
特にレース中駆け引きのためにダッシュをしたり、ラストスパートをかけたりするときには糖質が必要になります。
しかし長時間のマラソンでは糖質が枯渇する恐れがあります。
そこでクルマのガソリンを満タンにしてからドライブに出かけるのと同様、レース前には特に糖質をしっかりと蓄えておくことが大切になります。
栄養素の役割については以前のコラム「ランニングのための栄養摂取~栄養素を理解しよう」でも解説していますので、ぜひ読んでみてください。
グリコーゲンを多く貯蔵できればスタミナアップ
ところで糖質はグリコーゲンという形で肝臓や筋肉に蓄えられています。
ランニングを始めるとまず「血液中の糖質(グルコース)」が使われます。
血液中の糖質(グルコース)が少なくなると、「蓄えられていた糖質(グリコーゲン)」が分解され、グルコース(ブドウ糖)となって血液中に流れ出し不足分を補うことになります。
グリコーゲンを多く貯蔵できれば結果的にはスタミナがアップし、レース中の疲労を緩和できます。
「脂質」の貯蔵量はマラソン20~30回分相当!
一方もう一つの主役である脂質は、からだに中性脂肪として大量に蓄えられています。
その総量はマラソン20~30回分に相当します。
ですからレース前に殊更に脂質を蓄えようと考える必要はありません。
逆に脂質中心の食事をすることでからだに蓄えられる糖質の量が減ってしまう危険性さえあり、レース中の勝負所やラストスパートでガス欠を起こしかねません。
食事によって工夫しなければならないのは、貯蔵量の少ない糖質だと覚えておきましょう。
マラソン出場1か月前頃からの食事法
具体的にマラソン出場1か月前頃からの食事法を紹介しましょう。
この時期は風邪などに注意。疲労がたまると免疫機能が低下!
レース前に気を付けなければならないことは風邪をひくなど病気になってしまうことや、ケガをしてしまうことです。
特にランニング量が多くなると疲労がたまり、免疫機能が低下します。
感染症(インフルエンザなど)などの病気にかかりやすいからだになっているということです。
マラソン出場の4日前まではバランスのよい食事を意識
したがってレース直前の4日前までは食事のバランスに心がけ、栄養が偏らないよう糖質、脂質、タンパク質、ミネラル、ビタミンをしっかり取りましょう。
特にからだのコンディション調整に関わるビタミンやミネラルを摂るために、濃い色の野菜や果物、乳製品を多めに食べるのがおすすめ。
ビタミンやミネラルのサプリメントを活用するのも良いでしょう。
具体的なバランスの良い食事方法は本コラムの「ランナーのためのバランス食事法」でも紹介しています。
マラソン出場3日前からの食事法「グリコーゲンローディング」
次にマラソン出場3日前からの食事法です。
先ほども説明した通りレースの結果を左右しかねないのがグリコーゲンの貯蔵量です。
ここでは「グリコーゲンローディング」という糖質の体内貯蔵方法を紹介しましょう。「カーボローディング」と呼ぶ場合もあります。
グリコーゲンローディング(カーボローディング)を一言で表すと、筋肉や肝臓にできるだけ多くのグリコーゲンを貯蔵するために、試合直前はご飯やパン、パスタなどの糖質中心の食事(高糖質食)をすることです。
約50年前にはじまったグリコーゲンローディング法
今から50年ほど前に最初のグリコーゲンローディング法が考え出されました。
古典的と呼ばれる方法で、最初の3日間は糖質の食事を控え、一方でハードトレーニングをして徹底的に糖質を消費し、筋肉や肝臓内のグリコーゲンを使い切ります。
その後3日間はトレーニング量をやや抑え、糖質を中心とした食事をすることで空になった筋肉や肝臓に一気にグリコーゲンを蓄えます。
この方法はレース前にハードトレーニングが必要になることや、糖質制限食がコンディション調整にプラスにならないことなどから廃れていきました。
現在主流のグリコーゲンローディング法は、より取り入れやすく変化
30年ほど前から大リーグのピッチャーを中心に新しいグリコーゲンローディングの方法が試されるようになりました。
この方法は4日前までは普段通りのバランスの良い食事を摂り、3日前から高糖質食に変更する方法です。
練習量も特に変える必要がなく、コンディション調整が容易なこと、短期間で済むことなどランナーにとっても非常に効果的な方法です。
蓄えられるグリコーゲンの量も古典的方法とそん色なく、最近ではこの新しいグリコーゲンローディングの方法が、一般のランナーの間でも流行っています。
日曜日のレースを想定したグリコーゲンローディングのやり方
日曜日がレースだと想定した場合の、グリコーゲンローディング(カーボローディング)の方法を具体的に説明しましょう。
水曜日までは今まで通りのバランスの良い食事を心がけます。勝負は3日前の木曜日からです。
マラソン出場3日前の木曜日から開始
木曜日になったらおかずを少々控え、その分を糖質に回しましょう。
おかずを「少々」控えるところがポイントです。
おかずを減らさず糖質のみを増やすとカロリーオーバーでコンディションを維持するのが難しくなります。
なぜならレース直前のこの時期は練習量も控えめのはずで、練習によるエネルギー消費量が減少しているのですから・・・。
グリコーゲンローディングにオススメの高糖質食メニュー例
高糖質食としておすすめなのはチャーハンやちらし寿司、パスタの大盛、さらにはうどんとかやくご飯のセット、チャーハンとラーメンのセットなんて言うのもいいでしょう。
パスタとパンのセットやラーメンにおにぎりを加えたりするのもOK。もちろんサラダや乳製品も不足しない程度に加えるようにしましょう。
ただしあくまでも主役は主食である糖質です。
マラソン出場前日の土曜日まで高糖質食を続ける
こんな調子でレース前日の土曜日まで高糖質食を続けます。
グリコーゲンが筋肉と肝臓に満タンになっているはずです。
マラソン出場当日の朝食で摂る糖質は食べ慣れているものを
レース当日になりました。朝食はどうしたらよいでしょうか。ここでも大切なことは糖質中心の食事を摂ることです。
普段から朝食で食べ慣れているものを中心に食べましょう。パン派の人はパン、お米派の人はご飯で十分です。
ここで注意したいのは繊維質の多いイモ類は避けた方が良いということ。イモ類は腸内にガスをためる原因になりえます。
走っているときに腸内ガスがたまると腹痛の原因になりかねません。
消化のことも考慮し、ご飯、パン、めん類、おもち、パスタなどをレース開始の3時間前を目処に摂るようにしましょう。
マラソンではゲン担ぎの「トンカツ」はNG
朝食でゲン担ぎに「トンカツ」を食べるなんて言うのはもってのほか。
脂質やタンパク質を多く摂取すると消化に時間がかかりレースの負担になるだけです。
またビタミンやミネラルをとっておくことも大切。
朝食ではサラダよりも果物やフルーツジュースを活用しましょう。
果物やフルーツジュースには糖質も含まれていますので、食物繊維の多い生野菜よりもおすすめです。
レース30分~1時間前の「補食」でさらに糖質を摂ると良い
無理する必要はないのですが、レース直前の30分~1時間前に糖質をもうひと押ししておくのも良いアイディアです。
消化の良いすぐにエネルギー源になる食べ物です。
専門的には「補食」などと言いますが、チョコレート、カステラ、クッキー、あめ玉などがおすすめ。
最近ではゼリーやドリンク状の補給食品もたくさん売られています。走る前に心に余裕を持つためにも補食は「あり」です。
レース中の水分補給のやり方は「のどが渇いたと感じたら飲む」
レースが始まりました。ここでは途中の給水所におけるエネルギー補給を考えましょう。
とはいっても重要なのは失った水分の補給と、スピードアップやラストスパートに必要な糖質の補給です。
水分の補給は、基本的には失った水の量をそのまま補給するのが理想的。
しかしどれだけ水を失ったかは簡単にはわかりません。
そこでお薦めなのはのどが乾いたなと感じたらすぐに飲むことです。詳しい水分補給の方法については以前のコラム「ランニング時の水分補給の量とタイミング」でも紹介しています。
レース中の糖質の補給は20km過ぎから徐々にはじめる
エネルギー源となる糖質の補給ですが、基本的には勝負所となる後半のために、20km過ぎあたりから徐々に補給を始めます。
貯蔵しておいたグリコーゲンの半分以上がなくなっている可能性があるからです。
個人差もありますが30km付近ぐらいまでは、蓄えておいたグリコーゲンでだいたい賄えます。
しかし後半35km過ぎではグリコーゲン不足の状態に陥っていること多く、ラストスパートのためにも糖質をこまめに補給しておくことが重要です。
「35kmの壁」の原因のひとつがグリコーゲン(糖質)不足によるガス欠
マラソンではよく「35kmの壁」などと言われます。
これは35km付近から急に脚が重くなったり、痛みを感じてペースを保てなくなったりすることです。
原因は様々なのですが、貯蔵グリコーゲンの枯渇によるガス欠もその原因の一つ。ガス欠にならないよう、しっかりと糖質をレース中にも補給しましょう。
「ブドウ糖」は摂ってすぐ役立つ即効性のある糖質
どんな糖質を摂るのが良いでしょうか。
飲んですぐに(5~10分)役立つエネルギー源、つまり即効性のあるのがグルコース(ブドウ糖)です。
ブドウ糖を含んでいるスポーツドリンクはたくさんあります。
これらは失ったミネラルやビタミンも補給することができますので、自分に合ったものを飲みましょう。
ブドウ糖タブレットなども市販されています。携帯しておいてラストスパート直前に食べるのも良いかもしれません。
「ブドウ糖」の大量摂取はNG。20km過ぎから少しずつ補給しよう
ただしブドウ糖摂取には注意も必要です。それは一度に大量摂取をしないこと。
大量に摂取するとインシュリンが分泌され、血糖値(血液中に流れるブドウ糖の量を示す値)を下げてしまうからです。
血糖値が下がってしまうと、結局は筋肉で利用できるブドウ糖の量が減少し力が入らなくなり、脚が重くなったり動かなくなったりしてしまいます。
20kmを過ぎたらブドウ糖をこまめに少しずつ補給し、ラストスパートの直前にちょっと多めに摂取するのが良いでしょう。
直前であればインシュリンが分泌される前にラストスパートがかけられ、糖質パワーでダッシュができます。
川内選手のスペシャルドリンクはとっても合理的
皆さんは川内選手をご存知でしょうか。埼玉県庁にお勤めになっている傍ら、マラソンランナーとして全国各地で活躍されている市民ランナーの代表選手です。
彼の給水所においてあるスペシャルドリンクの中身は、オレンジジュースにハチミツとアミノ酸、塩を混ぜたものだそうです。
この構成は実に合理的です。
オレンジジュースとハチミツには補給すべき糖質が含まれ、アミノ酸には筋肉消耗の予防や疲労回復効果があります。さらに汗で失った塩分も入っています。
皆さんもこれまで述べてきた知識を基に、マラソンの距離に合わせたご自分のスペシャルドリンクにチャレンジしてみてはいかがでしょうか。
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